「龍神丸」という名前を聞いたことがあるだろうか。
日本酒ファンのあいだでは「一度飲んだら忘れられない」「入手困難な幻の銘酒」として語り継がれてきた銘柄だ。生産量が極めて少なく、特約店でしか手に入らない。にもかかわらず、全国に熱狂的なファンを持つ——この相矛盾した魅力が、龍神丸を特別な存在にしている。
その背景には、酒蔵の180年を超える歴史と、8代目蔵元の急逝、そして妻が立ち上がり酒造りを復活させたという、映画のような実話がある。
国税庁「令和4酒造年度 清酒の製造状況等」によると、全国の清酒製造場数は縮小傾向が続いており、小規模蔵の経営は決して容易ではない。そのなかで高垣酒造は量産を一切排した少量精密仕込みを貫き、和歌山の地酒文化の旗手であり続けている(出典: 国税庁 令和4酒造年度 清酒の製造状況等)。
本記事では、「龍神丸とはどんな日本酒か」から「全ラインナップと購入方法」「合う料理・楽しみ方」まで、蔵人の視点で徹底的に解説する。龍神丸をはじめて知った人も、長年のファンも、この記事を読めばあらためてこの酒の深さに気づくはずだ。
龍神丸とは?「幻の日本酒」と呼ばれるゆえん
龍神丸(りゅうじんまる)は、和歌山県有田郡有田川町に蔵を構える高垣酒造場が醸す日本酒の銘柄名である。
醸造される量が少なく、一般の酒販店では見かけることはほとんどない。流通は特約店に限定されており、県外の愛好家がこの酒を手にしようとすれば、特約店を探すか、蔵に直接問い合わせるしかない。それでも全国に数多くのファンがいるのは、一口飲んだときの印象が圧倒的だからだ。
日本酒評価サイトの口コミを見ると、「透明感のなかに米の旨みが溢れ出す」「冷やしても温めても顔が変わる」「これが地酒の頂点だと思った」といった言葉が並ぶ。
「幻」と呼ばれる四つの理由
| 理由 | 詳細 |
|---|---|
| 生産量の少なさ | 家族経営の小規模蔵元。機械化を排した手仕事による醸造のため絶対量が限られる |
| 特約店限定流通 | 一般酒販店・大型量販店での販売なし。認定された酒専門店のみに卸す |
| 季節ものが中心 | 冬〜春の仕込みによる年1回・季節限定リリースが基本。時期を逃すと1年待つ |
| 急逝と復活の歴史 | 8代目他界後しばらく醸造が中断し、復活後に希少性がさらに高まった |
「幻の日本酒」とは、単に本数が少ないということではない。飲んだ人が「また飲みたい」と思い、飲んだことのない人が「いつか飲んでみたい」と思い続ける——そういう求心力を持った酒だけが、その呼び名を維持できる。龍神丸はまさにそのような酒の一つだ。
なお、「龍神丸」という言葉はアニメ「魔神英雄伝ワタル」に登場するロボット(神魔界の飛行メカ)の名称としても知られているため、ウェブ検索の際にアニメ関連の情報が混在することがある。本記事で扱うのは和歌山県の日本酒「龍神丸」のみである。
高垣酒造の歴史と龍神丸誕生の物語
天保11年(1840年)創業——高野山の麓から
高垣酒造場が創業したのは天保11年(1840年)だ。江戸時代後期にあたり、日本酒の生産量が全国的に拡大していった時代である。
場所は和歌山県有田郡有田川町。高野山の麓に位置し、古来より弘法大師・空海ゆかりの地として知られるこの地域に、高垣家は酒造りの拠点を定めた。創業から185年以上を経た今も、蔵は同じ場所に立ち続けている。
創業の動機には、この土地に湧き出る特別な水が深く関係していると伝えられている。「空海水」と呼ばれるその水については次のセクションで詳しく述べるが、初代がこの霊水に魅せられてここで酒を造ることを決意した——そのことが高垣酒造の出発点になっている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 蔵元名 | 高垣酒造場 |
| 所在地 | 和歌山県有田郡有田川町 |
| 創業 | 天保11年(1840年) |
| 代表銘柄 | 龍神丸(りゅうじんまる)、喜楽里(きらり) |
| 仕込み水 | 有田川源流の「空海水」 |
| 主なスタイル | 無濾過生原酒、低温長期発酵 |
8代目・高垣淳一氏が「龍神丸」を生んだ
高垣酒造に代々受け継がれてきた清酒づくりの歴史の中で、「龍神丸」というブランドを立ち上げたのが8代目蔵元の故・高垣淳一氏だ。
淳一氏は、一般的な地酒のスタイルに満足することなく、醸造工程のあらゆる場面で「最高品質を追求する」という姿勢を徹底した。仕込み水の選定、酒米の選別、発酵温度の管理、搾りのタイミング——どこにも妥協を許さない酒造りが評判を呼び、龍神丸は徐々に日本酒愛好家のあいだで話題になっていった。
「幻の酒」と囁かれるようになったのも、このころからだ。生産量が少なく流通が限られているため、手に入れること自体が難しい。それが逆にブランドの希少価値を高め、全国からファンが集まるようになった。
2010年、悲劇と4年間の空白
しかし2010年の夏、悲劇が訪れる。8代目・高垣淳一氏が46歳という若さで急逝した。
それは龍神丸がようやく全国に知られはじめ、ファンが増えてきた時期だった。蔵には衝撃が走り、しばらく酒造りは中断を余儀なくされた。
同年の秋、一つの決断が下される。妻・高垣任世氏が9代目蔵元を引き継いだのだ。
任世氏は夫が存命中、専業主婦として子育てに専念していた。酒造りの経験はほとんどない。それでも「先祖や夫が積み重ねてきた酒造りの歴史を絶やしてはならない」という思いが、彼女を蔵へと立ち向かわせた。
義父の指導、近隣の蔵元からの支援、顧客からの激励を糧に、任世氏は蔵人としての技を身につけていった。そして中断から約4年後、龍神丸は正式に復活を果たした。
「蔵元夫婦の絆が復活させた酒」という本質
今、龍神丸の瓶を手にするとき、その背後にあるのは単なる醸造の技術だけではない。夫が命をかけて守り育てたブランドと、妻がそれを引き継いで守り続けているという絆の物語がある。
日本酒評価サイトで龍神丸を高く評価するコメントの多くに、「この酒の背景を知ってから飲んだら、また違う感動があった」という声がある。技術的な品質と人間的なドラマの両方が、龍神丸の評価を高い次元で支えているといえる。
龍神丸の醸造哲学——空海水と低温長期発酵
「空海水」という仕込み水の圧倒的な個性
高垣酒造の酒造りの根幹にあるのは、「空海水(くうかいすい)」と呼ばれる仕込み水だ。
有田川の源流から湧き出るこの水は、弘法大師・空海が発見した不老長寿の霊水であると言い伝えられてきた。空海が高野山を開いた際、この地を巡錫し、その水脈を世に知らしめたという伝承が残っている。霊水との呼び名は、信仰的な背景を持つと同時に、実際の水質の良さを象徴するものでもある。
高垣酒造の初代は、この「空海水」のまろやかさとコクに魅せられ、「この水で酒を造りたい」と思い立ったとされる。約185年にわたる酒造りの原点が、この水との出会いにある。
日本酒において仕込み水は酒質を大きく左右する。同じ酒米・同じ酵母・同じ製法を用いても、水が変われば酒は別物になる。日本酒の成分のおよそ80%を水が占めるからだ。空海水の特徴は、硬度が中程度で、ミネラルバランスが酵母の活性を程よく促す点にある。急激な発酵を起こさず、じっくりと熟成させるのに向いており、これが龍神丸の落ち着いた旨みの土台になっている。
仕込み水と日本酒の関係については仕込み水が日本酒に与える影響でも詳しく解説しているので、あわせて参照してほしい。
最高温度10℃の低温長期発酵
龍神丸の最大の醸造的特徴が、「最高温度10℃という低温でじっくりと長期発酵させる」という手法だ。
一般的な日本酒の発酵は、発酵のピーク温度が15〜20℃程度になることが多い。これに対して龍神丸は、10℃以下の低温を最高温度に保ちながら、時間をかけてゆっくりと発酵を進める。
| 項目 | 龍神丸(低温長期発酵) | 一般的な日本酒の発酵 |
|---|---|---|
| 最高温度 | 10℃以下 | 15〜20℃程度 |
| 発酵期間 | 長期(30日以上が目安) | 標準的(20〜25日) |
| 香りの傾向 | 繊細で複雑、米の旨みに寄る | フルーティーかつクリア |
| 旨みの出方 | じわりと凝縮された旨み | バランスよく整う |
| 管理の難度 | 高い(低温で酵母が不安定) | 比較的安定して管理しやすい |
低温では酵母の活動がゆっくりになり、エタノール生産に費やされなかった糖分やアミノ酸がより多く残る。その結果、「飲んだ瞬間に広がるふくよかな甘みと、後から追いかけてくる旨み」が生まれる。これが龍神丸の特徴的な味わいの正体だ。
しかし低温長期発酵は、管理が非常に難しい。温度が低いほど酵母は不安定になり、発酵が途中で止まってしまうリスクが高まる。高垣酒造では仕込みから搾り、瓶詰め、貯蔵、出荷に至るすべての工程で神経を集中させ、そのリスクと向き合いながら醸している。
酒造好適米100%使用と無濾過・生原酒へのこだわり
龍神丸は酒造好適米(酒米)を100%使用する。主要な純米生原酒では富山県産の五百万石が使われている。五百万石は淡麗な骨格を持つ酒米だが、龍神丸の醸造手法と組み合わせることで「淡麗な骨格の中に柔らかな旨みを宿す」という独自の味に仕上がっている。
また多くのラインナップで「無濾過・生原酒」を採用している。
- 無濾過:活性炭などによるろ過を行わない。米や麹由来の複雑な風味・色をそのまま残す
- 生(生原酒):火入れ(加熱殺菌)を行わない。風味が生き生きとしており、フレッシュさが際立つ
- 原酒:加水調整をしない。アルコール度数が高め(17〜18度程度)になる
これら三つの要素が重なることで、龍神丸は「造り手の意図がダイレクトに伝わる酒」になっている。生原酒ゆえに保存には注意が必要で、購入後は要冷蔵だ。詳しくは日本酒の保存方法——開封後はどれくらいもつ?を参照してほしい。
なお、龍神丸では最高位ラインナップに「袋吊り」という搾りの方法を採用している。袋吊りとは、もろみを袋に入れて吊り下げ、自重のみで自然に滴り落ちる酒だけを集める手法だ。圧力を一切かけないため、雑味が少なく繊細な酒質が得られる。搾りの手法については上槽(搾り)の方法と種類——袋吊りから薮田式までで詳しく解説している。
龍神丸のラインナップと味わい完全ガイド
主要ラインナップ一覧
龍神丸には複数のラインナップがある。以下に代表的なものを整理する。
| 銘柄 | 種別 | 精米歩合 | 主な使用酒米 | 味のスタイル | 参考価格(税込) |
|---|---|---|---|---|---|
| 龍神丸 純米生原酒 | 純米酒 | 60% | 五百万石(富山産) | 米の旨みふくよか、ナチュラルな甘み | 2,500〜3,500円台(720ml) |
| 龍神丸 純米吟醸生原酒 | 純米吟醸 | 50% | 山田錦・五百万石 | 吟醸香と旨みのバランス、キレのある後口 | 3,500〜5,000円台(720ml) |
| 龍神丸 大吟醸生原酒 | 大吟醸 | 40% | 山田錦 | 繊細で上品、花を連想させる香り | 5,000〜7,000円台(720ml) |
| 龍神丸 純米大吟醸袋吊り生原酒 | 純米大吟醸 | 40% | 山田錦 | 自重のみで搾った雫酒、最高峰の繊細さ | 11,000円(720ml) |
※価格はいずれも参考値。特約店・取扱い時期によって異なる。
各銘柄の味わい特徴
純米生原酒は龍神丸のエントリーポイントとして最も流通量が多い銘柄だ。精米歩合60%の五百万石は米の旨みをしっかりと残しており、飲み口はなめらかで中盤から豊かな旨みが広がる。冷やしていただくのが基本だが、ぬる燗(40℃程度)にするとまた別の表情を見せる。はじめて龍神丸を試したい人はここから入るのがよい。
純米吟醸生原酒は吟醸香と旨みのバランスが取れた一本だ。低温長期発酵ならではの複雑な香りが漂い、後半のキレが心地よい。食中酒として万能な選択肢で、刺身から肉料理まで幅広く対応する。
大吟醸生原酒は精米歩合40%まで磨き上げた山田錦を使用。龍神丸の中で最も繊細な香りを持ち、食前酒として純粋に香りと味わいを楽しむのに向いている。グラスを傾けるたびに香りが変化する複雑さが魅力だ。
純米大吟醸袋吊り生原酒は最上位ラインナップで、もろみを袋に入れて自重のみで滴り落ちる「雫酒」だ。720ml・11,000円(税込)という価格は、その希少性と品質の高さを体現している。生産本数が極めて少なく、飲む機会があればそれ自体が特別な体験となる一本だ。
「喜楽里」という兄弟銘柄
高垣酒造では「龍神丸」のほかに「喜楽里(きらり)」という銘柄も醸している。喜楽里は比較的流通量が多く、龍神丸より手に入れやすい。
蔵の醸造哲学を共有する銘柄として、龍神丸のファンが「喜楽里」から入門するケースも多い。「喜楽里 純米 中取り 無濾過生原酒」は評価が高く、龍神丸と同じく生原酒ならではのフレッシュな風味が楽しめる。
なかでも「喜楽里純米吟醸生原酒」の720ml版は、故・高垣淳一杜氏(8代目)が手がけた最後の仕込み酒の一つとして、今も日本酒ファンのあいだで語り継がれている。
龍神丸・喜楽里・他の幻の酒との比較
「幻の日本酒」として龍神丸と並んで語られることが多い銘柄には、静岡・三和酒造の臥龍梅や、静岡・志太泉酒造の磯自慢がある。各蔵の特徴を簡単に比較すると以下のとおりだ。
| 銘柄 | 産地 | 入手難度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 龍神丸(高垣酒造) | 和歌山 | 非常に高い | 空海水×低温長期発酵。物語性と味わいが融合 |
| 臥龍梅(三和酒造) | 静岡・清水 | 高い | 吟醸香の華やかさ、静岡型吟醸の代表格 |
| 磯自慢(磯自慢酒造) | 静岡・焼津 | 非常に高い | 全国新酒鑑評会常連。ワインのような複雑さ |
いずれも少量生産・特約店限定という共通点を持つが、味わいの方向性はそれぞれ異なる。龍神丸は「米の旨みを前面に出した純米系の深み」が際立っており、食中酒としての汎用性が高い。
龍神丸の入手方法と購入のポイント
特約店制度——なぜどこでも買えないのか
龍神丸が一般の酒販店に並ばない理由は、特約店制度を採用しているからだ。
特約店制度とは、蔵元が認めた酒専門店にのみ酒を卸す仕組みである。量より質を重視し、「この蔵の酒を正しく理解し、お客さまに適切な形で提供できる酒屋にしか卸さない」という方針を取る蔵が採用する。
龍神丸の場合も同様で、扱い店は全国に散在しており、特定の酒専門店か、蔵に問い合わせることで購入先を確認できる。
特約店を探す主な方法
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 高垣酒造公式サイト(takagakishuzo.com)に問い合わせ | 最も確実。蔵元から最寄りの特約店を紹介してもらえる場合がある |
| 酒専門店「鍵や」(sake-kagiya.com) | 龍神丸の正規取扱店として通販対応。複数銘柄を扱う |
| 紀の酒専門店「松尾酒店」(iisake.net) | 和歌山の地酒に特化した専門店。龍神丸の複数ラインナップを扱う |
| 日本酒専門のオンラインショップ | 在庫があれば通販で購入可。ただし在庫切れが多く、更新頻度の高い店をブックマークしておくとよい |
購入時の三つの注意点
注意1: 生原酒は購入後すぐに冷蔵保存
龍神丸の多くは「生原酒」のため、品質管理には注意が必要だ。購入後は必ず冷暗所(冷蔵庫)で保存し、できる限り早期に飲み切ることが望ましい。生酒は火入れ酒に比べて劣化が早く、開封後は風味の変化を楽しみながら数日以内に飲み切るのが理想だ。
注意2: 季節限定品は見つけたときが買いどき
龍神丸は年間を通じてラインナップが変わる。冬から春にかけての仕込み酒は夏〜秋に市場に出ることが多く、時期を逃すと1年待つことになる。特約店の在庫情報をこまめにチェックし、気になるラインナップは見つけたときに確保することを強く勧める。
注意3: 定価以上の転売品に注意
希少性が高いため、フリマサイトや転売業者による高額販売が見られることがある。定価より著しく高い価格で流通している商品には、保管状態が不明なものも含まれる。正規の特約店から購入することで、品質と価格両面での安心が得られる。
価格帯の目安
| ラインナップ | 容量 | 参考価格(税込) |
|---|---|---|
| 龍神丸 純米生原酒 | 1800ml | 5,500〜8,000円台 |
| 龍神丸 純米生原酒 | 720ml | 2,500〜3,500円台 |
| 龍神丸 純米吟醸生原酒 | 720ml | 3,500〜5,000円台 |
| 龍神丸 大吟醸生原酒 | 720ml | 5,000〜7,000円台 |
| 龍神丸 純米大吟醸袋吊り生原酒 | 720ml | 11,000円 |
| 喜楽里 純米 中取り 無濾過生原酒 | 720ml | 1,800〜2,500円台 |
価格はいずれも参考値。特約店・取扱い時期によって異なる場合がある。
龍神丸に合う料理と季節ごとの楽しみ方
生原酒ならではのペアリング
龍神丸は生原酒が中心のため、アルコール度数が高く(17〜18度程度)、旨みと風味が凝縮されている。そのため、淡泊な料理よりもある程度の味わいを持つ料理と合わせると相乗効果が生まれやすい。
| 龍神丸の種類 | 合う料理 | ペアリングのポイント |
|---|---|---|
| 純米生原酒 | 白身魚の塩焼き、冷や奴、鰹のたたき、根菜の煮物 | 米の旨みが素材の風味を引き立て、後口をすっきりまとめる |
| 純米吟醸生原酒 | 天ぷら(特に白身魚・野菜)、白身の刺身、あさりの酒蒸し | 吟醸香が揚げ物の風味とマッチし、互いを高め合う |
| 大吟醸生原酒 | チーズ(ブリー・カマンベール)、生ハム、鯛の昆布じめ | 繊細な香りが発酵食品の旨みと調和し、上品なペアリングに |
| 純米大吟醸袋吊り | 食前に単体でゆっくり楽しむ、薄切り刺身、ホタテの刺身 | 酒自体が主役。料理は脇役に徹するくらいがちょうどいい |
季節ごとの風味変化を楽しむ
龍神丸の純米生原酒は、出荷されたばかりの「搾りたて」の時期と、夏を経て少し熟成が進んだ「秋口」とでまったく異なる味わいを見せる。
搾りたての時期(冬〜春)は、フレッシュで荒々しいフルーティーさが前面に出る。まだ角が残っており、炭酸のようなガス感を感じることもある。秋口(9〜11月)になると、旨みが落ち着き、まとまりが増す。「なめらかになった」という表現がぴったりの変化だ。
同じ一本でも飲む時期で違う表情を持つのが、無濾過生原酒の醍醐味だ。
温度の変化で広がる世界
龍神丸は温度帯による表情の変化が面白い一本だ。
- 5〜10℃(よく冷やす):シャープで清潔感ある飲み口。旨みより香りが際立つ。夏の暑い日に特に心地よい
- 15〜20℃(冷蔵庫から出して少し置く):旨みと香りのバランスが整う。多くの蔵人がすすめる飲み頃温度帯
- 35〜40℃(ぬる燗):旨みがふくらみ、酒の骨格が浮かび上がる。純米生原酒はこの温度帯でも美味しく飲める
大吟醸・純米大吟醸は繊細な香りを活かすために冷〜常温が基本。純米系はぬる燗まで幅広く対応できる。それぞれの個性に合わせて温度を変えながら楽しんでほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 龍神丸はどこで買えますか?
A. 龍神丸は特約店制度を採用しているため、一般の酒販店では販売していません。高垣酒造の公式サイト(takagakishuzo.com)に問い合わせるか、酒専門店「鍵や」「松尾酒店」などの正規取扱い店を通じて購入してください。在庫は季節・時期によって異なるため、見つけたときが買いどきです。
Q2. 龍神丸はどれくらいの価格ですか?
A. ラインナップによって異なります。純米生原酒720mlで2,500〜3,500円台が目安です。最上位の「純米大吟醸袋吊り生原酒」720mlは11,000円(税込)です。いずれも特約店・時期によって価格が異なる場合があります。
Q3. 龍神丸の保存方法を教えてください。
A. 多くのラインナップが「生原酒」のため、要冷蔵保存が必須です。購入後は速やかに冷蔵庫で保管してください。開封後は1〜2週間以内に飲み切ることが理想です。直射日光や高温は風味の劣化を招くため避けてください。未開封でも冷蔵庫保管が推奨されます。
Q4. 龍神丸と喜楽里はどう違いますか?
A. どちらも高垣酒造が醸す銘柄ですが、龍神丸は同蔵の最高峰ブランドとして位置づけられており、特約店でしか入手できない希少性があります。喜楽里は比較的入手しやすく、龍神丸への入門酒として楽しむ方が多いです。両方とも無濾過・生原酒スタイルが基本で、高垣酒造の醸造哲学を共有しています。
Q5. はじめて龍神丸を飲むならどれがおすすめですか?
A. まずは「純米生原酒」から試すことをお勧めします。最もスタンダードなラインナップで流通量も比較的あり、龍神丸の「空海水×低温長期発酵」がもたらす米の旨みと繊細な風味を体験できます。よく冷やして飲み、後半は少し温度を上げてみると、味の変化を楽しめます。
Q6. 高垣酒造の蔵見学はできますか?
A. 高垣酒造は小規模な家族経営の蔵のため、常時の一般開放蔵見学は行っていません。ただし、蔵のイベントや特別な機会に蔵を公開することがある場合があります。最新情報は公式サイト(takagakishuzo.com)でご確認ください。
Q7. 龍神丸はギフトや贈り物に向いていますか?
A. 「幻の日本酒」としての知名度と希少性から、特別な贈り物として非常に喜ばれます。ただし生産量が少ないため、時期によっては在庫がないこともあります。贈答用に確保したい場合は、特約店に早めに相談し、入荷時期を確認することをお勧めします。
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まとめ——龍神丸が語りかけるもの
龍神丸とは、単なる「おいしい日本酒」ではない。
天保11年(1840年)から続く高垣酒造の歴史、空海の霊水伝説と結びついた仕込み水、8代目が命をかけて追求した醸造哲学、そしてその死後に妻が立ち上がり復活させたという物語——。一杯の中に、これだけの時間と人の意思が込められている。
低温長期発酵と無濾過・生原酒へのこだわりは、「今この瞬間にしか出せない味を届けたい」という思いの表れだ。保存や管理が難しい生原酒を、あえて貫き続けているのは、技術的な挑戦への意志がなければできない。
日本酒のブランドとは、造り手の価値観が液体に宿ったものだ。龍神丸を飲むとき、飲み手はその価値観と向き合う。
はじめて飲む人は、ぜひ純米生原酒から試してほしい。冷やしてグラスに注ぎ、一口含んだ瞬間——この酒が「幻」と呼ばれる理由が、自然とわかるはずだ。
参考情報
- 高垣酒造場 公式サイト(takagakishuzo.com)
- 国税庁「令和4酒造年度 清酒の製造状況等」(2023年公表)
- SAKETIME「龍神丸(りゅうじんまる)」銘柄ページ(www.saketime.jp/brands/1637/)
- たのしいお酒.jp「和歌山の日本酒【龍神丸:髙垣酒造】蔵元夫婦の絆が復活させた酒」(tanoshiiosake.jp/6189)
- 唎酒師の日本酒ブログ「日本酒『龍神丸』の特約店&評判を徹底解説」(sake-kikizakeshi-biwa.com/ryujinnmaru-nihonnshu-kounyuu/)
- 紀の酒専門店 松尾酒店(www.iisake.net)


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