日本酒の「中取り」とは?読み方・意味とあらばしり・責めとの違いをわかりやすく解説

最終更新: 2026-09-03

日本酒のラベルや酒販店のポップで「中取り」という文字を見かけたことはないだろうか。「あらばしり」や「責め」と並べて語られることが多いこの言葉は、もろみを搾る工程「上槽(じょうそう)」の中でも、特に品質が高いとされる部分を指す専門用語だ。「名前は知っているけれど、具体的に何を意味するのかはっきり説明できない」という方も多いだろう。

本記事では、日本酒の「中取り」について、読み方・基本の意味から、上槽という工程そのものの仕組み、あらばしり・責めとの違い、鑑評会出品酒で使われる「雫酒(斗瓶囲い)」との関係、ラベルでの見分け方まで、体系的に解説する。搾りの工程を理解すると、同じ蔵・同じ銘柄の酒でも「どの部分を搾ったものか」によって味わいが変わる理由が見えてくる。

「中取り」の読み方と基本の意味

読み方は「なかどり」

「中取り」は「なかどり」と読む。日本酒の醸造工程において、もろみ(発酵中の酒のもと)を搾る作業の中間段階で得られる清酒を指す言葉だ。

中取り=中汲み・中垂れとほぼ同じ意味

業界では「中取り」のほかに「中汲み(なかくみ)」「中垂れ(なかだれ)」という呼び方もあり、いずれも同じ段階の酒を指す同義語として使われている。日本酒造組合中央会の用語解説でも、上槽の最初に出る「あらばしり(荒走り)」、最後に圧力をかけて搾り切る「責め」に対し、その中間に位置する部分が「中垂れ」として説明されており、現場や商品ラベルでは「中取り」「中汲み」という呼称がより一般的に使われている。

呼称 読み方 使われる場面
中取り なかどり 商品ラベル・酒販店での表記に多い
中汲み なかくみ 酒蔵・専門誌での表記に多い
中垂れ なかだれ 酒税・公式用語解説での表記に多い

呼び方は異なっても指している酒は同じであり、上槽の過程で「あらばしりの後、責めの前」に得られる部分という点は共通している。

日本酒が搾られる工程「上槽」の基礎知識

中取りを理解するには、まず「上槽」という工程自体を知る必要がある。上槽とは、発酵を終えたもろみを搾り、清酒(液体)と酒粕(固形分)に分離する作業のことだ。この工程を経て初めて、もろみは私たちが飲む「日本酒」になる。

上槽の方法には、大きく分けて次のような種類がある。

搾り方 特徴
槽搾り(ふなしぼり) 酒袋にもろみを詰め、伝統的な槽(ふね)に積み重ねて自重と圧力で搾る方法
自動圧搾機(ヤブタ式など) アコーディオン状の板で酒袋を挟み、空気圧で効率よく搾る現代の主流方式
袋吊り(雫取り) 酒袋を吊るし、圧力をかけずに自然に滴り落ちる雫だけを集める方法

どの方式でも、搾り始めから搾り終わりにかけて出てくる酒の性質は徐々に変化していく。この変化を段階ごとに呼び分けたものが「あらばしり」「中取り」「責め」の三分類であり、上槽方法そのものの種類については上槽の方法と種類を解説した記事でも詳しく取り上げている。

あらばしり・中取り・責め|搾りの三段階を徹底比較

上槽で得られる酒は、搾り始めから終わりまでの間に次の三段階に分けて呼ばれる。

段階 読み方 採取タイミング 見た目・風味の特徴
あらばしり(荒走り) あらばしり 圧力をかける前、もろみ自体の重みで自然に流れ出る最初の部分 白く濁り、炭酸ガスを含むことが多い。フレッシュでやや荒々しい香味
中取り(中汲み・中垂れ) なかどり 軽い圧力をかけ始めた中盤の部分 透明度が高く、香りと味のバランスが最も優れるとされる
責め(せめ) せめ 圧力を強めて搾り切る最後の部分 酒粕由来の雑味・渋みが出やすいが、濃厚な旨みを持つ

あらばしり(荒走り)

搾りの最初、まだ圧力をかけていない段階で、もろみ自体の重みによって自然に流れ出てくる部分。白濁しており、発酵由来の炭酸ガスを含むため、ピリッとした刺激を感じることもある。フレッシュな香りと荒々しい勢いのある味わいが特徴で、搾りたて限定の商品として出荷されることが多い。

中取り(中汲み・中垂れ)

あらばしりの後、軽めの圧力をかけて搾られる中間部分。もろみの状態が最も安定しているタイミングで得られるため、雑味が少なく透明度が高い。香りと味のバランスが整っていることから「搾りの中で最も評価が高い部分」とされ、鑑評会に出品される酒や、蔵の看板商品の仕込みに使われることが多い。1回の上槽において、量的にも中心を占める部分にあたる。

責め(せめ)

中取りの後、さらに圧力を強めて搾り切る最終段階。力を加えるぶん酒粕由来の雑味や渋み、酸味が出やすくなる一方で、深い旨みと複雑な味わいを持つのも特徴だ。単独で商品化されることは少なく、他の段階の酒とブレンドして味の厚みを調整する目的で使われることが多い。

なぜ中取りは「一番おいしいところ」と言われるのか

中取りが高く評価される理由は、主に次の3点に整理できる。

1. 雑味が少ない:あらばしりのような荒々しさも、責めのような酒粕由来の渋みも少なく、もろみ本来の香味がクリアに出やすい。

2. 香味のバランスが良い:軽い圧力で搾られることで、吟醸香や米の旨みが過不足なく引き出される。

3. 量的な中心を占める:1回の上槽で得られる酒の中で、質・量ともにバランスが取れた部分であるため、蔵の標準品・看板商品に使いやすい。

このため、特定名称酒の中でも吟醸酒・純米大吟醸酒といった香味を重視するタイプでは、中取りの部分を重点的に使う、あるいは中取りだけを別に瓶詰めして上位ラインの商品とするケースが見られる。

中取りと「雫酒・斗瓶囲い」の違い

中取りとしばしば混同されるのが、「雫酒(しずくざけ)」や「斗瓶囲い(とびんがこい)」と呼ばれる酒だ。両者は「搾りの良い部分を集める」という発想は共通するが、技法としては異なる。

項目 中取り 雫酒(斗瓶囲い)
圧力 軽度の圧力をかけて搾る 圧力をかけず、重力だけで自然に滴らせる
採取方法 槽・自動圧搾機での上槽工程の一部 酒袋を吊るし、一滴ずつ斗瓶(一斗=約18Lの瓶)で受ける
得られる量 上槽全体の中で中心的な量を占める ごくわずか。1つのもろみから数本〜十数本程度のことも
主な用途 蔵の標準品・上位ラインの原酒 全国新酒鑑評会の出品酒、最高級の限定品

全国新酒鑑評会に出品される大吟醸酒の多くは、圧力を一切かけない袋吊り(雫取り)によって集めた「斗瓶取り」「斗瓶囲い」と呼ばれる酒を使うことが一般的だ。これは中取りよりもさらに手間と時間をかけ、ごく少量だけを丁寧に集める技法であり、中取りの中でも特に贅沢な採り方といえる。鑑評会そのものの仕組みについては全国新酒鑑評会とは?金賞の価値と蔵人視点の裏側で詳しく解説している。

中取りの呼び方が蔵によって異なる理由

「中取り」「中汲み」「中垂れ」はいずれも同じ段階を指す言葉だが、どの呼称を使うかは蔵元や地域、さらには商品コンセプトによって異なる。これは日本酒の専門用語に共通する傾向で、全国統一の表示ルールが定められているわけではなく、各蔵が自社の伝統や言葉の響きを踏まえて呼び方を選んでいるためだ。

例えば、公式な用語解説や酒税関連の資料では「中垂れ」という表現が使われることが多い一方、商品ラベルや酒販店の店頭では「中取り」「中汲み」という呼び方のほうが広く浸透している。同じ酒を指していても呼称が異なるため、初めて目にした際は戸惑うかもしれないが、意味そのものは共通していると理解しておけば問題ない。

中取りと無濾過・生原酒の組み合わせ

中取りという表示は、しばしば「無濾過」「生原酒」といった他の製法表示と組み合わせて使われる。これらはそれぞれ独立した製法上の情報であり、組み合わせることでより具体的な酒の個性が伝わる仕組みになっている。

表示 意味
中取り 上槽時の中間部分を使用していること
無濾過 搾った後に活性炭などで濾過処理をしていないこと
生原酒 火入れ(加熱殺菌)も加水調整もしていないこと

「中取り 無濾過 生原酒」とラベルに併記されている場合、搾りの質が良い部分を、余分な処理を加えずそのまま瓶詰めした酒であることを意味する。素材本来の香味が最も残りやすい組み合わせといえる。無濾過についてさらに詳しく知りたい方は、日本酒の「無濾過」とは?種類・特徴・飲み方ガイドも参考にしてほしい。

ラベル表示で「中取り」を見分ける方法

「中取り」は法律で定義された特定名称(純米・吟醸など)とは異なり、あくまで搾りの工程段階を示す任意の表示だ。そのため、商品名や裏ラベルの説明文に「中取り」「中汲み」と記載されているかどうかを確認するのが基本的な見分け方になる。

一般的には、次のような場所に表示されることが多い。

  • 商品名そのもの(例:「〇〇 中取り原酒」「〇〇 中汲み生酒」など)
  • 裏ラベルの説明文(「このお酒は上槽時の中取り部分のみを使用しています」といった記載)
  • 季節限定・数量限定品のポップや販促資料

なお「中取り」は上槽のどの部分を使ったかという製法上の情報であり、純米・吟醸・無濾過・生原酒といった他の表示と組み合わせて使われることが多い。ラベル全体の読み方については日本酒のラベルの読み方ガイド、純米・吟醸などの分類については純米酒と大吟醸の違いも参考にしてほしい。

中取りの選び方・楽しみ方のポイント

中取りは雑味が少なくバランスが整っているため、冷酒から常温まで幅広い温度帯で楽しみやすいのが特徴だ。特に次のようなシーンに向いている。

  • 日本酒を飲み慣れていない人の入門用:クセが少なく飲みやすいため、最初の一本として選びやすい。
  • 食中酒としての利用:香味のバランスが良く、さまざまな料理と合わせやすい。
  • 飲み比べの基準として:あらばしり・責めと同じ銘柄で飲み比べることで、搾りによる味の違いを体感できる。

逆に、炭酸感やフレッシュな荒々しさを求める場合はあらばしり、コクや複雑味を求める場合は責めの酒が向いている。搾りの段階によって個性が異なることを知っておくと、同じ蔵・同じ仕込みの酒でも選択肢が広がる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「中取り」はどう読みますか?

A. 「なかどり」と読みます。「中汲み(なかくみ)」「中垂れ(なかだれ)」とほぼ同じ意味で使われます。

Q2. 中取りはあらばしり・責めと比べて高価ですか?

A. 一般的には中取りの方がやや高めに設定される傾向があります。中取りは蔵の看板商品に使われることが多く、バランスの良さが評価されるためです。ただし、あらばしりの限定感や責めのブレンド用途など、価格の高低は銘柄や蔵の方針によって異なります。

Q3. 中取りと「雫酒」「斗瓶囲い」は同じものですか?

A. 異なります。中取りは上槽(搾り)工程の中で軽い圧力をかけて得る部分を指すのに対し、雫酒・斗瓶囲いは圧力を一切かけず、重力だけで自然に滴り落ちる雫を集めたものです。雫酒の方がより手間がかかり、得られる量も少なくなります。

Q4. 「中取り」は特定名称(純米・吟醸など)と関係がありますか?

A. 直接の関係はありません。中取りは上槽のどの部分を使ったかという製法上の情報であり、純米酒・吟醸酒・本醸造酒など、法律上の特定名称とは別の軸の表示です。両方が組み合わさって商品名やラベルに記載されることが一般的です。

Q5. 中取りはどんな料理と合わせやすいですか?

A. 雑味が少なくバランスが良いため、特定の料理に限定されず幅広い食事と合わせやすいのが特徴です。白身魚の刺身や焼き魚、だしを効かせた和食など、素材の味を生かした料理との相性が良いとされています。

関連記事: 本醸造酒とは?純米酒との違いを蔵人が解説

まとめ

日本酒の「中取り」とは、もろみを搾る「上槽」工程のうち、最初に自然流下する「あらばしり」と、最後に圧力を強めて搾り切る「責め」の間に位置する中間部分を指す言葉だ。「中汲み」「中垂れ」とほぼ同じ意味で使われ、雑味が少なく香味のバランスが良いことから、蔵の看板商品や鑑評会出品酒の仕込みに使われることが多い。

さらに圧力を一切かけず重力だけで集める「雫酒(斗瓶囲い)」は、中取りよりもさらに手間をかけた技法であり、全国新酒鑑評会の出品酒などに用いられる。ラベルに「中取り」「中汲み」と書かれていたら、その酒がどの段階で搾られたものかを意識しながら味わってみると、日本酒の奥深さをより楽しめるはずだ。

日本酒の搾り方・製法についてさらに知りたい方は、上槽の方法と種類を解説した記事や、日本酒の新酒とは?しぼりたてとの違いもあわせてご覧いただきたい。

参考情報

  • 日本酒造組合中央会「日本酒用語集」:あらばしり・中垂れ・責めの定義
  • 独立行政法人酒類総合研究所・日本酒造組合中央会:全国新酒鑑評会の審査方法・出品規定(吟醸酒の原酒、酸度0.8以上等)
  • kurabito.jp「上槽の方法と種類を蔵人の視点から解説」(既出記事、josou-hoho-shurui):あらばしり・中取り・責めの比較表
  • kurabito.jp「全国新酒鑑評会とは?」(既出記事、zenkoku-shinshu-kanpyokai):鑑評会出品酒と斗瓶取りの関係



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