最終更新: 2026-10-24
喜久水酒造は長野県飯田市に本社を置く、南信州・下伊那地方で唯一の酒蔵だ。1944年(昭和19年)、戦時統制により地域に点在していた37の酒造家が合同して生まれた経緯を持つ。日本酒だけでなくシードルや焼酎も手がける多角的な蔵で、2026年はIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)とフェミナリーズ世界ワインコンクールという国際コンクールで日本酒・シードル双方が受賞した。さらに、一度は栽培が途絶えた酒米「たかね錦」を地元契約農家と復活させている点が、他の蔵元にはない独自の取り組みだ。この記事では蔵の基本情報、たかね錦復活の背景、最近の受賞歴、そして11月に開催される利き酒イベントを一次情報で整理する。
喜久水酒造とは?基本情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 蔵元 | 喜久水酒造株式会社 |
| 所在地 | 長野県飯田市鼎切石4293番地 |
| 創業 | 1944年(昭和19年)、飯田・下伊那地域の37の酒造家が企業合同して誕生 |
| 特徴 | 飯田市・下伊那地方で唯一の酒蔵。日本酒に加えシードル・焼酎・リキュールも製造する多角経営 |
| 企業理念 | 「水と出会い、人が育てた『ここにしかない酒』を造る」 |
喜久水酒造公式サイトによると、同社は南信州下伊那地方で唯一の酒蔵として、日本酒を中心にシードルや焼酎など地域のニーズに合わせた酒類を製造している。戦後の企業合同で生まれた経緯を持つ蔵が、現在は日本酒専業ではなく複数の酒類を手がける経営スタイルを取っている点は、単一銘柄に集中する蔵元とは異なる特徴といえる。
独自の取り組み:幻の酒米「たかね錦」の復活

喜久水酒造が他の蔵元と一線を画す点は、一度は姿を消した酒米「たかね錦(高嶺錦)」を地元契約農家と復活栽培していることだ。
たかね錦は1939年(昭和14年)に長野県で誕生した品種で、「北陸12号」を母、「東北25号」を父として交配された。かつては吟醸造りに欠かせない品種として重宝されたが、粒が小さく割れやすいため精米時のロスが大きく、栽培は徐々に衰退した。その後、たかね錦にガンマ線を照射した変異株から選抜する形で、1978年(昭和53年)に新品種「美山錦」が登録された。美山錦は現在も全国の酒蔵で広く使われる主要な酒造好適米の一つであり、たかね錦はその直接の親品種にあたる。
喜久水酒造は、いったん栽培が途絶えたたかね錦を地元の契約農家とともに復活させ、純米酒「風越」などの原料米として使用している。あわせて、美しい棚田を守る保全活動にも地域のパートナーと取り組んでいるという。全国的な主要品種の「ルーツ」にあたる米を、消えた産地で蔵が自ら復活させている例は多くなく、地域振興と酒造りを結びつけた独自性の高い取り組みだ。
日本酒・シードル、世界的コンクールでの受賞

飯田経済新聞(みんなの経済新聞ネットワーク)が2026年6月に報じた内容によると、喜久水酒造は2026年、日本酒とシードルの両部門で国際的な評価を得た。
| 銘柄 | コンクール | 部門 | 受賞内容 |
|---|---|---|---|
| 本醸造にごり酒「白貴天龍」 | インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2026 | SAKE部門 本醸造の部 | 金賞・長野本醸造トロフィー(同一銘柄で3年連続・通算4回目の金賞) |
| シードルN35テロワール ロゼ | フェミナリーズ世界ワインコンクール2026 | 日本産シードル部門 | 最高賞「TOP OF THE BEST」 |
日本酒の「白貴天龍」は複数年にわたり継続して評価されている銘柄であり、単発の受賞ではなく品質の安定性を示すデータといえる。一方のシードルは、同じ蔵が日本酒とは別の酒類でも世界的な賞を獲得した例で、前述の多角経営が品質面でも結果を出していることを裏付けている。
11/21開催「SusTaiN35」利き酒イベント

飯田経済新聞によると、喜久水酒造は2026年11月21日18時〜20時30分、飯田市追手町の「舞鶴」で日本酒の会「SusTaiN35」の第5回を開催する。今回のテーマは利き酒(テイスティング)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日時 | 2026年11月21日 18:00〜20:30 |
| 会場 | 舞鶴(長野県飯田市追手町) |
| テーマ | 利き酒(テイスティング) |
| 提供酒 | 約7種(第73回長野県清酒品評会 吟醸酒部門 首席優等賞受賞酒、ひやおろし、新酒「初穂しずく」、当日限定酒など) |
| 参加費 | 8,000円(料理付き) |
| 定員 | 40人 |
| 主催 | 飯田エフエム放送 |
このイベントは飯田エフエム放送が「飯田の日本酒文化を盛り上げよう」との趣旨で企画しており、今回で5回目。過去には料理とのマリアージュや書道パフォーマンスをテーマにした回もあったという。蔵元が単独で開催するのではなく、地元メディアと組んだ継続的な企画である点は、地域に根づいた日本酒文化の発信方法として参考になる。参加を検討する場合は、申し込み開始時期や空き状況が変わるため、飯田エフエム放送の公式窓口で最新情報を確認してほしい。
長野県の清酒産業における位置づけ

経済産業省の経済構造実態調査(2022年、品目編)によると、長野県の清酒出荷金額は79億8,200万円で、兵庫県(810億3,500万円)や新潟県(367億円)といった大規模産地と比べると規模は大きくない。喜久水酒造が拠点を置く飯田市は長野県内でも南端に位置し、県内の他の酒蔵が集まる諏訪・松本エリア(真澄とは?7号酵母を生んだ諏訪の名蔵など)とは異なる南信州という地域性を持つ。出荷額の規模では目立たない長野県だが、たかね錦のような希少品種の復活や日本酒・シードルの多角経営など、小規模な蔵だからこそ取り組める独自色が強いのが特徴といえる。
よくある質問
Q1. 喜久水酒造はどこにある酒蔵ですか?
長野県飯田市鼎切石4293番地にあり、飯田市・下伊那地方では唯一の酒蔵だ。
Q2. 「たかね錦」とはどんな酒米ですか?
1939年に長野県で誕生した酒米で、現在広く使われる「美山錦」の直接の親品種にあたる。粒が小さく割れやすいため一度は栽培が衰退したが、喜久水酒造が地元契約農家と復活栽培している。
Q3. SusTaiN35には誰でも参加できますか?
定員40人のイベントで、飯田エフエム放送が申し込みを受け付けている。参加費は料理付きで8,000円。最新の空き状況や申し込み方法は飯田エフエム放送の公式窓口で確認するのが確実だ。
まとめ:喜久水酒造のポイント
- 喜久水酒造は長野県飯田市唯一の酒蔵。1944年、37の酒造家合同で誕生
- 一度は衰退した酒米「たかね錦」(美山錦の直接の親品種)を地元契約農家と復活栽培
- 2026年、日本酒「白貴天龍」(IWC金賞・長野本醸造トロフィー)とシードル「N35テロワール ロゼ」(フェミナリーズ世界ワインコンクール最高賞)の両部門で世界的な評価を獲得
- 2026年11月21日、利き酒テーマの「SusTaiN35」第5回を飯田市内で開催予定
- 長野県の清酒出荷金額は79億8,200万円(2022年、経済産業省調査)で大規模産地ではないが、希少品種復活や多角経営に独自色がある
酒蔵・蔵元の記事をもっと読みたい方は酒蔵・蔵元の記事を全て見る(完全ガイド)も参考にしてほしい。
この記事は蔵人編集部が執筆しました。蔵人 -KURABITO- は日本酒と醸造所の専門メディアです。
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参考情報
- 飯田経済新聞「飯田・喜久水酒造の日本酒・シードル、世界的コンクールで高評価」(https://iida.keizai.biz/headline/1813)確認日: 2026-10-24
- 飯田経済新聞「喜久水酒造、飯田で日本酒の会『SusTaiN35』5回目は利き酒がテーマ」(https://iida.keizai.biz/headline/2076)確認日: 2026-10-24
- 喜久水酒造公式サイト(https://kikusuisake.co.jp/)確認日: 2026-10-24
- 長野ものづくり情報サイト「喜久水酒造株式会社」(https://nagano-monodukuri.com/2018/09/18/喜久水酒造(株)-翠嶂館/)確認日: 2026-10-24
- NAGANOSAKE.JP「喜久水酒造」(https://naganosake.jp/blogs/kuramoto-list/kuramoto_kikusuishuzou)確認日: 2026-10-24
- 酒猫ブログ「『美山錦』はガンマ線照射によって生まれた!酒米の品種改良について」(https://www.sake-neko.work/entry/2019/06/16/151803)確認日: 2026-10-24
- SAKE Concierge「ひとごこち〈酒米の系譜〉」(https://sakeconcierge.com/hitogokochi-genealogy-of-sake-rice/)確認日: 2026-10-24
- 経済産業省 経済構造実態調査(2022年、品目編)都道府県別の清酒出荷金額(e-Stat、https://www.e-stat.go.jp/)確認日: 2026-10-24


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