最終更新: 2026-10-12
クラフトサケ醸造所を新しく開業する場合、免許関連の法定費用(登録免許税3万円+行政書士報酬30万〜120万円程度)に加え、発酵タンクや瓶詰め設備などの設備投資に400万〜700万円程度が必要になり、総額の目安は580万〜1,000万円程度とされている。これは「その他の醸造酒製造免許」を新規に取得して小規模にクラフトサケを造る場合の相場であり、規模や中古設備の活用度によって上下する。本記事では2026年10月時点の制度・相場情報に基づき、清酒免許との違い、開業までの手順、費用の内訳、実際の資金調達例までを整理する。
クラフトサケ開業の全体像:清酒免許と何が違うのか

クラフトサケとは、米・米麹・水を発酵させる清酒の製造技術をベースに、清酒では使えない副原料を加えて造る「その他の醸造酒」に区分される酒だ。開業を考えるうえで最初に押さえておきたいのは、清酒製造免許とその他の醸造酒製造免許で新規参入のしやすさが大きく異なる点である。
| 項目 | 清酒製造免許 | その他の醸造酒製造免許(クラフトサケ) |
|---|---|---|
| 最低製造数量基準 | 年間60kL | 年間6kL |
| 新規免許の発行 | 原則新規発行なし(需給調整要件) | 新規取得が可能 |
| 主な対象者 | 既存蔵元の増産・事業譲渡など | 新規参入者・小規模事業者 |
| 登録免許税 | 150,000円(通常の酒類製造免許) | 30,000円(国税庁 登録免許税法関係通達による区分) |
清酒は新規免許が原則発行されないため、新規参入者は既存の酒造免許を持つ蔵元を譲り受けるか、その他の醸造酒免許でクラフトサケとして参入するのが現実的な選択肢になる。
クラフトサケ開業までの手順【5ステップ】

| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 所要期間 | 免許申請だけで数か月、設備・物件準備を含めると半年〜1年程度 |
| 費用総額 | 580万〜1,000万円程度(内訳は後述) |
| 難易度 | 中〜高(酒税法の知識と税務署との事前調整が必須) |
| 必要なもの | 事業計画書、製造設備、申請書類一式 |
Step 1: 事業計画と製造規模の検討
年間6kL以上の製造を見込める事業計画を作成する。税務署は免許審査の際に「製造技術」「製造設備」「製造見込み量」を確認するため、具体的な仕込み回数・1回あたりの製造量から年間生産量を逆算して計画書に落とし込む必要がある。
Step 2: その他の醸造酒製造免許の申請
管轄の税務署に申請書類を提出する。自分で申請する場合は登録免許税3万円のみで済むが、酒税法特有の書類作成は専門性が高く、行政書士に依頼する場合は報酬として30万〜120万円程度(申請書類作成30万〜100万円、事前相談支援を含む)がかかる。
Step 3: 物件確保と設備投資
発酵タンク、攪拌・加熱装置、瓶詰めラインなどの設備を揃える。新品・中古の組み合わせで400万〜700万円程度が目安となる。物件は賃貸・所有どちらでも申請可能だが、税務署による現地確認が入るため、免許要件を満たす設備配置ができるスペースを確保しておく。
Step 4: 資金調達
自己資金に加えて、日本政策金融公庫や地方銀行の創業融資を利用するケースが多い。事業計画書の精度が融資審査に直結するため、Step 1で作成した計画書を金融機関向けにも整えておくとよい。
Step 5: 試験製造・販路確保
免許取得後、試験製造を行いながら酒質を固め、直販・酒販店・オンライン販売などの販路を同時に準備する。
失敗しないためのコツ・注意点

| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 製造規模が最低基準に届かない設計 | 自己判断で計画を進め、税務署への事前相談を省略 | 計画段階で管轄税務署に事前相談し、6kL基準を満たす設備・仕込み計画を確認する |
| 設備投資額を過小評価 | 中古設備の見積のみで判断し、附帯工事費を見落とす | 発酵タンク・瓶詰めライン・衛生設備まで含めて複数業者から見積を取る |
| 資金調達が遅れる | 事業計画書の数値根拠が弱く、融資審査で差し戻しになる | 日本政策金融公庫等の創業融資相談窓口に早期に相談し、計画の精度を上げる |
開業費用の目安【内訳表】
| 費用項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円 | その他の醸造酒製造免許1件あたり(国税庁の規定、2026年10月時点) |
| 行政書士への申請代行費用 | 30万〜120万円程度 | 自分で申請すれば不要だが、酒税法特有の書類作成は専門性が高い |
| 設備投資(発酵タンク・攪拌装置・瓶詰めライン等) | 400万〜700万円程度 | 新品・中古の組み合わせや規模により変動 |
| 書類準備実費(事業計画書・設備図面・財務証明書等) | 数千円〜30万円程度 | 自作か外注かで幅が大きい |
| 総額目安 | 580万〜1,000万円程度 | 大部分は設備投資が占める |
実際の資金調達例として、秋田県男鹿市でクラフトサケ醸造所「稲とアガベ」を2021年に立ち上げた岡住修兵氏は、自己資金200万円に加え、日本政策金融公庫と秋田銀行から金利0.3%・総額2億1,100万円の協調融資(3年据え置き、返済期間20年)を受けて創業したことを自身のnoteで公開している。この金額は醸造設備だけでなく事業全体の立ち上げ資金を含む例であり、個々の計画の規模によって必要資金は大きく変わる点に留意したい。
データハブページでは、都道府県別の清酒出荷額など業界全体のデータを定期更新している。経済産業省の経済構造実態調査(2022年)によると清酒の全国出荷額は約3,680億円規模であり、その他の醸造酒免許によるクラフトサケ参入は、この既存市場に対する新しい入口として増加傾向にある。
クラフトサケ開業に関するよくある質問
Q1: 小さな物件でも開業できますか?
その他の醸造酒製造免許は年間6kLからの製造が基準となるため、清酒免許(60kL基準)に比べれば小規模な物件でも申請しやすい。ただし税務署による設備・製造工程の現地確認があるため、最低基準を満たせる設備配置ができるスペースは必要になる。
Q2: 清酒免許とクラフトサケ免許、どちらが取りやすいですか?
新規参入の観点では、その他の醸造酒製造免許の方が現実的である。清酒製造免許は需給調整要件により原則新規発行が行われていないため、新規に酒蔵を立ち上げたい場合はクラフトサケとしての参入が主な選択肢になる。
まとめ:クラフトサケ開業を検討する人へ
- 法定費用(登録免許税3万円+行政書士報酬30万〜120万円程度)だけでなく、設備投資400万〜700万円程度を含めた総額580万〜1,000万円程度が目安
- 清酒免許と異なり、その他の醸造酒製造免許は新規取得が可能で、年間6kLという低い最低製造数量基準が参入のしやすさにつながっている
- 事業計画の精度が免許審査・資金調達の両方を左右するため、税務署への事前相談と金融機関向けの計画書作成を早期に進めることが重要
クラフトサケの制度や代表的な醸造所の例についてさらに知りたい方は、クラフトサケとは?清酒との違いと挑戦する醸造所6選も参考にしてほしい。免許申請の具体的な手続きについては、酒造免許の取得要件と手続き完全ガイドで詳しく解説している。
この記事は蔵人編集部が執筆しました。蔵人は日本酒・醸造キャリアに特化した専門メディアです。
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参考情報
- 国税庁「登録免許税法関係通達」(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/6.htm)— 酒類製造免許の登録免許税額の区分を確認(確認日: 2026-10-12)
- 行政書士法人による解説記事「酒類製造免許の取得を行政書士が徹底解説」(https://k-tec-scrivener.jp/2025/03/10/sake/)— その他の醸造酒製造免許の設備投資・行政書士報酬の内訳を確認(確認日: 2026-10-12、2025年3月時点の記事)
- 岡住修兵氏note「創業2ヶ月で地銀と公庫から2億円融資を受けたCRAFTSAKE醸造家の話」(https://note.com/zumioka/n/nde7aee2a044e)— 稲とアガベの創業資金調達の実例として引用(確認日: 2026-10-12)
- 経済産業省「経済構造実態調査」(2022年、品目編)— 清酒の都道府県別出荷額データ(e-Stat 政府統計の総合窓口 https://www.e-stat.go.jp/、確認日: 2026-10-12)


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